「ラビ」
「んー」
「食え」
「は? ・・・むぐ」
いつものように黙々と蕎麦を食すユウの横に座って。
細い麺を吸い上げる形のよい唇に、ぼんやり見とれていたら、彼がすくい上げた次の一口が、突然俺の口の中に押し込まれた。
間接キスとか夢にまで見た"あーんv"だとか、そんな甘い考えが脳裏をよぎる前に、当たり前だが、生理的な反応が先んじる。 むせながらも見苦しく吐き出したりしないようなんとかかんとか飲み下すと、しょうゆとだしの味がツンと鼻に沁みた。
「・・・ユ、ウ。 なんなんさ、いきなり」
「ぼーっとしてるテメェが悪ィ」
「誰も突然蕎麦攻撃受けるとは思わんさ」
「攻撃じゃねェよ」
「わりとダメージでかかったさ! どしたん? なに、今日の蕎麦そんなにうまかった?」
結構苦しかったから、若干嫌味な口調で言ってやる。
するとユウはふいと視線を逸らして
「・・・大晦日だろ、今日は」
「オオミソカ? ああ・・・」
日本では一年の終わりの日をそう呼ぶのだと。
そして除夜の鐘と年越し蕎麦がかかせないのだと、何かで読んだ気がしなくもない。
「年越し蕎麦さね?」
「・・・知ってんのか」
「一応は。 日本人はよっぽど蕎麦が好きなんさね・・・」
「・・・・・縁起物だ、好き嫌いじゃねェ」
「エンギモノ?」
「先行くぞ」
出し抜けに言って、ユウはそそくさと食器を片付け、食堂を出て行ってしまった。
何か地雷でも踏んだかと首を傾げつつ、俺はすぐにユウの後を追わないで、図書室に足を向けた。
――――『来年もあなたがつつがなく過せますように』
ラビたんの健康を心配して無理やり蕎麦食べさせるユウちゃんとか素敵。
そんでラビたんが年越し蕎麦の意味とか知ってるっぽくて、知らないだろうとタカくくってやってただけに急に恥ずかしくなったりしたらもっといいと思います。萌え。
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