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風邪をひくというのは、面倒というか不思議というか、けれど少し救いでもあって。
自分はまだしも人間なのだと、実感することができるから。
「・・・・・」
もぞりと、布団の奥から手をひっぱりだし、額にあててみる。いつだって冷たい指先は、熱をはらんだこの身にはちょうどいい氷嚢がわり。
どのくらい寝ていたんだろうか。
口の中が乾いて、舌が張り付いてしまっている。無理に動かそうとすると、咳が出た。奥の方で痰が凝っているようなのに、思うように吐き出せない。
喉の奥にいかんともしがたい不快感を感じながら、水を求めて枕もとをまさぐった。
ペットボトルを唇にあてて、一口。味なんて、感じない。生ぬるい感触が喉を滑り落ちて、それだけ。不快感はマシになったような、そうでもないような。
キャップを閉じて、横になったままでペットボトルをまた枕元へ放った。ごとり、と音がして、少し転がったような音が続いて、止まる。どうやらサイドテーブルからは落ちなかったようだと思って、目を閉じた。
静かだ。
静かすぎて、割れた窓から漏れ入る隙間風の音が耳に付く。
――アイツがいないから。
フ、と俺は笑う。自嘲。病気になると人間、心細くなるというが、まったく。
・・・・・・いや、これは心細いからなんかじゃない。
俺はこの通り何もできなくて、何もすることがなくて、本当に、暇で暇でしょうがないから。
アイツのことでも考えるしかない、ただそれだけなんだ。
突発で、ラビュのようなそうでないような。